現在、温暖化や化石資源の枯渇、人口爆発による食糧難など地球規模の課題が持ち上がっています。そのため、自然環境への負荷を小さくしながら食糧やエネルギーを確保する持続可能型社会の構築が求められています。このような課題を解決していくためには、さまざまな生物が持つ生命機能の共通性・多様性を解明し、高度に利用することが重要となります。したがって、様々な専門分野の研究者の協力・連携が必要不可欠です。
応用生命科学専攻では、化学と生物を軸にして基礎および応用研究を展開する農芸化学という学問領域を中心に据え、学際的かつ国際的な研究教育活動を推進しています。具体的には、物理化学、有機化学、生化学、分子生物学、細胞生理学を始めとした多角的なアプローチを駆使し、微生物や植物、動物、また異種生物間で生じる相互作用など様々な現象について分子レベルで理解することを目指しています。さらに、新たな発見を基に応用研究に発展させ、社会の発展に貢献することも本専攻の重要な役割です。独自の視点で生命現象を深く理解して新しい原理を導き出し、それを発展させ独創的な技術開発をなし得る人材、日本に留まらず世界の産官学を支える人材の育成を行っています。
私たち応用生命科学専攻は、生命、食料、環境など「生物と化学」に関連した事象を分子・細胞レベルで研究し、地球が抱える諸問題の解決に役立つバイオテクノロジーを創造して、その研究成果を持続可能な人間社会の実現に役立てることを目指しています。
「人類の健康は、地球という惑星の健康の上に成り立つ」とするプラネタリーヘルスという考え方がありますが、私たちを取り巻く地球環境はさまざまな局面で持続可能な状態を逸脱しており、このままでは人類の生活・福祉が脅かされることが懸念されています。関連する諸問題を解決するために、バイオテクノロジーに対する社会の期待は高く、私たちはそうした期待に応える研究成果をあげ、その分野で活躍する人材を輩出することを責務だと考えています。
応用生命科学専攻には16分野と1寄附講座が所属し、微生物、植物、昆虫、動物など、多様な生物を研究対象としています。また、学問分野も、物理化学、有機化学、生化学、分子生物学、細胞生理学、構造生物学など多岐に渡り、それぞれの切り口で生命現象の理解に切り込んでいます。そして、これらの基礎研究の成果を、企業とも連携しながら、農業生産、発酵・食品・化学工業、環境保全などの実社会で生じるさまざまな課題を解決するための応用研究に発展させています。現代社会では、前述のプラネタリーヘルスの観点から、自然環境と調和をとりながら、必要な食糧・エネルギーを確保し、生活の質を向上させることが求められています。この困難な課題を解決するためには、様々な学問分野の協力が必要であり、多様な専門とバックグランドを持つ研究者が集う当専攻はとても良い学習・研究環境です。その恵まれた環境の中で、京都大学が創立以来築いてきた「自学自習」の理念に従って、学生には様々な学問領域を自発的に学び、研究課題を自ら設定できる高い意識を持つ研究者・技術者になってほしいと考えています。
応用生命科学専攻では、応用生命科学科(学部)に比べて定員が大幅に増加し、これまでの実績として毎年定員の3分の1程度の外部入学者を受け入れ、留学生も毎年5-7名程度を受け入れています。多様なバックグランドと個性を持った学生が、それぞれの知識と経験を活かしながら、新しい学びと発見にチャレンジしています。広い視野で深く考えながら、思い切り実験・研究を楽しみ、自立した研究者・技術者として社会に出てほしいと思います。興味を持った方は,まずは気軽に研究室の担当者かHPにアクセスして下さい。是非、我々とともに学び、成長しましょう。
京都大学 農学研究科
応用生命科学専攻 専攻長
伊福 健太郎
本専攻に在籍する教員の研究内容や経歴、目標、メッセージをお届けします。
「植物細胞壁 = バイオマス」の成り立ちを調べ、コントロールする
老化に伴う疾患の理解と食による健康長寿社会の実現
環境問題、農業問題を植物の光合成で解決する
多細胞生物における細胞の運命決定の仕組みに迫る
講座名 | 研究室 | 教授 | 准教授 | 助教 |
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応用生化学講座 | 細胞生化学 | 木岡 紀幸 | 木村 泰久 | 黒田 美都 永田 紅 (特任助教) |
生体高分子化学 | 菅瀨 謙治 | 古川 亜矢子 | 宗 正智 | |
生物調節化学 | - | 宮下 正弘 | - | |
化学生態学 | 森 直樹 | 小野 肇 | 吉永 直子 | |
分子細胞科学講座 | 植物栄養学 | 伊福 健太郎 | 小林 優 | 落合 久美子 上妻 馨梨 |
エネルギー変換細胞学 | 井上 善晴 | - | 野村 亘 (特任助教) | |
応用微生物学講座 | 発酵生理及び醸造学 | 小川 順 | 岸野 重信 | 安藤 晃規 |
制御発酵学 | 阪井 康能 | 由里本 博也 | 白石 晃將 | |
生物機能化学講座 | 生体機能化学 | 白井 理 | 北隅 優希 | 宋和 慶盛 |
生物機能制御化学 | 三芳 秀人 | 村井 正俊 | 桝谷 貴洋 | |
応用構造生物学 | 菅瀨 謙治 (兼任) | - | 水谷 公彦 | |
生体分子機能部門 (化学研究所) |
分子生体触媒化学 | 山口 信次郎 | - | 林 謙吾 増口 潔 小川 哲史(特定助教) |
分子微生物科学 | 栗原 達夫 | 川本 純 | 小川 拓哉 | |
木質生命科学部門 (生存圏研究所) |
森林圏遺伝子統御学 | 杉山 暁史 | - | 棟方 涼介 |
森林代謝機能化学 | 飛松 裕基 | - | 巽 奏 | |
木質バイオマス変換化学 | 岸本 崇生 | 西村 裕志 (特定准教授) |
渡邊 崇人 |
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寄付講座 (農学研究科) |
産業微生物学 | 上田 誠 (客員教授) |
原 良太郎 (特定准教授) |
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修士課程・博士課程の修了生の多様なキャリアパスを紹介します。(2022年9月)
『最後』の学生生活を、『最高』の環境、仲間と共に…。
多角的な視点で農業の未来を切り拓く
予定通りになんていきません
咲く場所は自分で選べるということ(植物と違って)